📖『人を動かす』デール・カーネギー 本当の「褒め方」とは

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『人を動かす』を数知れず繰り返し読んだ私がたどり着いた、本当の「褒め方」とは

時代を超えて読み継がれる一冊の本があります。デール・カーネギーの『人を動かす』。1936年に出版されて以来、コミュニケーションと人間関係の「バイブル」として、世界中の人々のデスクに置かれてきました。

仕事やプライベートで「もっと円滑な人間関係を築きたい」「自分の考えをうまく伝えたい」と願う人なら、一度は手に取ったことがあるのではないでしょうか。

この記事では、この不朽の名著が示す普遍的な原則を振り返ると共に、単なるテクニック論で終わらせないための、核心的な実践方法について深掘りしていきます。

なぜ『人を動かす』は今も読み継がれるのか?不朽の原則たち

本書の根底に流れる哲学は驚くほどシンプルです。それは、「自己中心的な考えを改め、他人に関心を持ち、相手の立場を理解し、尊重すること」

この哲学を具体的な行動に落とし込んだものが、有名な「原則」です。本書は主に4つのパートで構成されています。

パート1:人を動かす三原則(基本姿勢)

  • 批判も非難もしない、苦情も言わない。
  • 率直で、誠実な評価を与える(重要感を与える)。
  • 相手の立場に身を置き、強い欲求を起こさせる。

パート2:人に好かれる六原則(好意を引き出す)

  • 誠実な関心を寄せる。
  • 笑顔を忘れない。
  • 名前を覚える。
  • 聞き手にまわる。
  • 相手の関心のありかを見抜く。
  • 心からほめる。

パート3:人を説得する十二原則(相手を導く)

  • 議論を避ける。
  • 相手の誤りを指摘しない。
  • 自分の誤りを快く認める。
  • 穏やかに話す。
  • 相手に「イエス」と言わせる。
  • 相手にしゃべらせる。
  • 相手に思いつかせる。
  • 人の身になる。
  • 同情を寄せる。
  • 美しい心情に呼びかける。
  • 演出を考える。
  • 対抗意識を刺激する。

パート4:人を変える九原則(成長を促す)

  • まずほめる。
  • 遠まわしに注意を与える。
  • 自分の過ちを話したあとで注意する。
  • 命令せず、提案する。
  • 相手の顔をつぶさない。
  • わずかなことでも心からほめる。
  • 良い評判を立て、期待をかける。
  • 激励する。
  • 喜んで協力させる。

これらの原則を読むと、「なるほど」と頷くものばかりです。しかし、本当の挑戦はここから始まります。特に「褒める」という行為、あなたは正しく実践できているでしょうか?

テクニックを超えて。私が考える「本当の褒め方」

『人を動かす』を何度も読み返し、私のコミュニケーションのバイブルとして活用する中で、一つの結論に至りました。それは、「うわべだけ、見えるところだけを褒めても、人の心は動かない」ということです。なぜなら、私自身がそうされても嬉しくないからです。

では、どうすればカーネギーが言う「誠実な評価」や「心からの賞賛」ができるのでしょうか。私は、そのための行動指針を次のように考えました。

”相手に興味を持つ。相手を観察する。良いところを見逃さない。悪いところは見えても口には出さない。”

この4つのステップこそが、「褒める」という行為を、単なるお世辞から、心に響くメッセージへと昇華させる鍵なのです。

あなたはAさんに、どちらの言葉をかけますか?

この違いを、具体的な例で考えてみましょう。

毎日オフィスをきれいにしてくれるAさんがいます。彼女の仕事ぶりに感謝を伝えたいとき、あなたならどうしますか?

<一般的な褒め方> 「Aさん、毎日きれいにしてくれてありがとう。本当に偉いね」

もちろん、これでも感謝は伝わります。しかし、どこか定型句のようで、相手の心に深く残るかは分かりません。

<観察に基づいた、具体的な褒め方> 「Aさん、毎日きれいにしてくれて本当にありがとう。特に、あそこの隅っこってすごく汚れやすいのに、Aさんがいつも丁寧に拭き上げてくれるから、いつもピカピカで、本当に気持ちよく仕事ができるんだ。 この丁寧さはAさんでないとできないことだよ。心から感謝してる」

この2つの言葉の違いは明らかです。後者の言葉が心に響くのは、「観察」というプロセスが入っているからです。

  • 「隅っこが汚れやすいこと」を知っている。
  • 「そこを丁寧に拭いていること」に気づいている。
  • その行動が「自分を気持ちよくさせていること」を伝えている。
  • 「あなただからこそできる」という承認のメッセージがある。

これはもはやテクニックではありません。「相手への真摯な関心」そのものです。これこそが、カーネギーが伝えたかった人間関係の神髄ではないでしょうか。

まとめ:『人を動かす』の真髄は「観察」から始まる

『人を動かす』に書かれている原則は、どれも強力です。しかし、その根底にある「他人への誠実な関心」を忘れてしまうと、すべてが空虚なテクニックに成り下がってしまいます。

もしあなたが、人間関係をより豊かにしたいと願うなら、まずは身近な一人の人に深く興味を持つことから始めてみませんか。

その人が何をしているのか、どんな工夫をしているのか、どんな価値を提供してくれているのか。

その人をじっくりと「観察」し、見つけた素敵な事実を、具体的な言葉で伝えてみる。その一言が、相手の心を動かし、あなた自身の世界をも変える、魔法の一言になるはずです。

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