なぜ違う?由来と歴史から見える日本の食文化
― 地域と家庭の数だけある、日本の正月の味 ―
お正月に食べる「お雑煮」。
実はこの料理ほど、地域差・家庭差が大きい日本料理はありません。
だしも違えば、味付けも違う。
餅の形も、焼くか煮るかも違う。
入れる具材に至っては、まさに千差万別。
でもそれは、雑煮が「まとまっていない料理」だからではありません。
むしろその逆で、日本の歴史と暮らしがそのまま器に入った料理だからなのです。
1. お雑煮は、何がそんなに違うの?
お雑煮の違いは、主に次の4点に集約されます。
- だし
- 味付け
- 餅の形・調理法
- 具材
まずは、地域ごとの代表的な違いから見ていきましょう。
2. 地域でこんなに違う、お雑煮の顔
◆ 味付け(汁のベース)
| 地域 | 主な味付け・特徴 |
|---|---|
| 関東 | 鰹節・昆布だし+醤油(すまし仕立て)。色はやや濃い |
| 関西 | 昆布だし+白味噌。まろやかで甘みがある |
| 北陸・中国 | すまし・味噌が混在。地域差が非常に大きい |
| 九州 | 鶏だし、焼きあご(飛魚)など。だし文化が豊か |
◆ 餅の形・調理法
| 餅の種類 | 主な地域 | 調理法 | 背景 |
|---|---|---|---|
| 角餅(切り餅) | 関東・東北 | 焼いてから入れる | のし餅文化 |
| 丸餅 | 関西・中国・四国・九州 | 煮て入れる | 円満・縁起 |
◆ 代表的な具材(地域例)
- 関東:鶏肉、小松菜、かまぼこ、里芋
- 関西:大根、人参、里芋、金時人参
- 新潟:鮭、いくら、野菜たっぷり
- 香川:あん餅雑煮(白味噌+甘い餅)
- 福岡:かつお菜、鶏肉、丸餅
- 島根・鳥取:小豆雑煮(赤い汁)
3. 同じ九州でも、家庭でここまで違う
私自身、北部九州に住んでいますが、
わが家のお雑煮(北部九州)
- あごだし
- 焼いた丸餅
- かつお菜、しいたけ、かまぼこ
→ あっさり、澄んだ味わい
夫の実家のお雑煮
- 基本は同じ
- ぶりが加わる
私の実家(南部九州)のお雑煮
- かつおだし
- 丸餅(焼かずに煮る)
- 干し海老、干し椎茸、里芋、大豆もやし、かまぼこ
同じ九州でも、ここまで違う。
だからこそ、「うちの雑煮が普通」だと思っていた味が、
実はとても家庭的な味だったと気づかされます。
4. なぜ、お雑煮はここまで多様なのか
雑煮が統一されなかった理由は、きわめて日本的です。
- 年貢米文化・餅文化の違い
- だし・味噌・醤油の地域差
- その土地で手に入りやすい食材
- 武家・商家・農村、それぞれの食文化
正月は「家の味」を大切にする行事だったため、
全国的な標準化が進まなかったと考えられます。
5. お雑煮のルーツは、一つではない
お雑煮の起源も、一本の線では説明できません。
◆ 共通する起点
- 平安〜室町時代の公家・武家社会
- 餅は神聖な食べ物(神の依り代)
- 正月に、だし汁+餅+具材で神を迎える
「正月に餅入りの汁物を食べる」
この思想が、すべての雑煮に共通しています。
◆ 三つの発展系統
| 系統 | 特徴 |
|---|---|
| 武家社会 | 味噌仕立て、縁起食材、出世・勝運 |
| 公家・寺社 | 昆布だし、白味噌、丸餅 |
| 庶民文化 | 地元食材、信仰や行事と結びつき多様化 |
この重なり合いが、現在の雑煮文化を形づくりました。
6. それでも、お雑煮に共通するもの
どれほど姿が違っても、共通点は変わりません。
- 新年を祝う「ハレの日」の料理
- 餅を食べて、一年の無病息災を願う
- 家族で囲み、記憶に残る味
まとめ|だから、お雑煮に正解はない
お雑煮は
「正月に餅を汁で食べる」という共通の起点を持ちながら、
地域と家庭がそれぞれ育ててきた料理です。
どこの雑煮が正しい、ということはありません。
どれもが、日本文化の正統な一形態。
今年のお正月、
自分の雑煮をあらためて味わいながら、
「これは、我が家の歴史なんだ」と思えたら――
それもまた、雑煮の楽しみ方だと思います。
価格:1880円 |



コメント